研究概要 |
経頭蓋磁気刺激法を用いて,ヒト咬筋の反射性および中枢性応答を筋電図学的に解析し,以下の結果を得た。 1.頭頂の外下方側9cm部を刺激した時には同側咬筋から4種類の,頭頂の外側3〜5.5cm ; 前方2.5cm部を刺激した時には対側咬筋から2種類の活動性応答を記録した。 2.同側性応答の潜時は刺激閾値の低い順に6msec,10〜13msec,25〜27msecおよび2〜3msecであった。潜時の短い2応答はM波およびH波で,潜時約10msecおよび25msecの応答はそれぞれ四肢におけるS波に相当する反射応答および皮質運動野由来の反応の可能性が最も高いと考えた。 3.対側性応答の潜時はそれぞれ11〜13msecと23msecであった。前者は皮質由来電位で,1波(Amassian : 1987)あるいはD波(Edyly : 1990)に相当すると考えた。 4.ガム咀嚼中に刺激を加えると,咀嚼リズムは延長し,その後2〜3ストロークの咀嚼周期は咀嚼リズムの乱れは,リズム発生器に対する刺激の外乱効果による可能性が高いと考察した。 5.経頭蓋磁気刺激による咬筋活動電位の抑制相について,潜時80msec以降の弱い(不完全)抑制期間の発現には皮質が関与している可能性が高いことを指摘した。
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