研究概要 |
ヒアルロン酸は哺乳動物の結合組織に広く存在している代表的なglycosaminoglycanで,関節液,軟骨基質には特異的に多く存在している。関節液の主成分はこのヒアルロン酸であり,またこのヒアルロン酸は軟骨基質においてlink protainを介しproteoglycanの内潤滑を担っていると同時に軟骨に栄養を与えている重要な物質である。しかし病的な状態では、ヒアルロン酸の分子量は減少することが知られている。そこで病的な状態である変形性顎関節症に対しヒアルロン酸の注入療法が考えられ,従ってその有用性を確かめる必要がある。われわれは先に確立した変形性顎関節症モデルを用いることにより,ヒアルロン酸ナトリウムの注入療法が変形性顎関節症発症にたいし抑制効果があるかどうかを病理組織学的解析を行い,その有用性を検討することにした。今回の実験では羊6頭を使用し全身麻酔下にて両側の顎関節を関節腔,下関節腔を外科的に解放し関節円板中央部に直径3.8mmの穿孔を設け,ついで関節軟骨表層の被膜を外科的に切除した。初期手術後,7,10,14,21日目にヒアルロン酸ナトリウム製剤1mlを左側関節腔に注射し,右側には同量の生理食塩水を注射した。術後1ケ月目と3ケ月目に屠殺し顎関節を一塊として取り出し,標本を作製,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い組織学的検索を行った。その結果,ヒアルロン酸ナトリウムは羊変形性顎関節症を有意に抑制することが示された。
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