研究概要 |
本研究の目的は口腔および腸管および口腔粘膜上皮は腸管および口腔由来細菌のLPS刺激に対してどのようなサイトカインを産生するか,上皮細胞に恒常的に発現しpolymeric IgAのreceptorとして機能するSCはどのように調節されているかであった。 その結果,以下の成果が得られた。 1)LPS刺激により粘膜上皮は刺激12時間目からIL-1,IL-6,IL-8,TGF-3,TNF-αなどのサイトカインmRNAを発現させた。 2)LPS刺激により粘膜上皮に発現するSC遺伝子はtime-dependentに増加し,刺激後,72時間でプラトーに達した。また,SC遺伝子の発現はdose-dependentに増加し,LPS量10μg/mlでプラトーに達した。 3)LPS刺激粘膜上皮は刺激後,24時間目からSC蛋白の産生を増加させ,72時間でプラトーに達した。また,SC蛋白の産生はLPS量10μg/mlでプラトーに達した。しかし,low doseのLPS刺激ではSC遺伝子,蛋白ともに増加しなかった。 4)両上皮細胞ともCD14,CD11b,CD11c,PAF receptorなどのLPS receptor mRNAを発現した。 以上のことから,上皮細胞はLPS刺激に対して種々のサイトカインやSCの産生増加を引き起こし,生体防御に関与しているものと考えられた。さらに,上皮細胞におけるLPS receptorの存在は生体内においてもLPSのシグナル伝達がこれらのreceptorを通して起こっていることを示唆するものと考えられ,さらにLPS receptorのsignal transduction pathwayについて検討する必要があるものと考えられる。
|