研究概要 |
矯正的な歯の移動に伴う歯槽骨リモデリングと歯根吸収における骨基質タンパクのオステオポンチン(Opn)オステオカルチン(Osc)オステオネクチン(Osn)の役割を分子レベルで検討した。 7周齢の雄性SD系ラット(180〜200g)の上顎第一臼歯と第二臼歯間に矯正用ゴム片(厚さ0.5mm)を挿入し矯正的な歯の移動を行った。歯の移動0、1、3、5、7日目にラットを潅流固定し、上顎骨を摘出し蟻酸にて脱灰し、パラフィン包埋後、矢状断にて4μmの薄切切片を作成した。Opn,Osc,OsnのDigoxigenin標識cRNAプローブを作成し、非アイソトープ系においてin situハイブリダイゼーションを行い、mRNAの発現を組織形態学的手法と併せて検出した。さらにNothern hybridization,in situ hybridization法によるOpnの定量化およびOpn発現細胞数の同定および数値化、またImmunohistochemistoryによるOpn蛋白の分布を検討した。その結果、機械力の作用により歯槽骨の圧迫(1日目)ならびに吸収(3〜5日目)の起こっている時期には、骨細胞ならびに破骨細胞、単核細胞にOpnの遺伝子発現が認められ、Osc,Osn mRNAの発現は認められなかった。対照群においては、上顎第一臼歯根間中隔の遠心側の骨細胞のわずか3.3%がOpnを発現していたが、実験開始12時間後には24.1%、24時間後には53.2%、48時間後には87.5%の骨細胞がOpnを強く発現するようになった。一方、歯槽骨の牽引(1日目)ならびに活発な形成(3〜5日目)が起こっている時期には、紡錐形ないし立体系の骨原性の細胞が多数発現し、これらの細胞はOsc,Osnの遺伝子発現を伴っていた。また、5日目では圧迫側、牽引側にのみならず根間中隔の全域でOsc,OsnさらにOpnの遺伝子発現が認められた。したがって、歯の移動時の歯槽骨リモデリングにおいて、Osc,Osnは骨の形成に、Opnは吸収に関与することが示唆された。骨吸収と形成のカップリングに接着因子であるOpnが積極的に関与することが示された。これらの結果は現在国際学術雑誌に投稿準備中である。
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