| 研究概要 |
n-3系多価不飽和脂肪酸に富む魚油の摂取はアラキドン酸と骨吸収のケミカルメディエーターであるプロスタグランディン類の産生を抑制する。そこで本研究では、魚油の長期的摂取が骨の成長と骨代謝,さらに実験的歯の移動時の歯槽骨吸収におよぼす影響について検討した。4週齢雄性Wistar系ラットを対照群と実験群に分け,それぞれ含有脂肪分をコーン油10%,精製魚油10%に調整した飼料を与えた。実験時間は2,4,6,8,10,14,18,22,26週とし、それぞれ各群8匹のラットについて脛骨近位部と下顎頭を骨形態計測によって分析した。加えて、飼育開始6週目のラット上顎第一臼歯を0,3,7および14日間実験的に頬側移動させ、圧迫側の骨吸収動態を評価した。
1.脛骨近位部では、実験開始6週以降、実験群の1次骨梁の破骨細胞数と骨吸収は対照群の60〜80%、2次骨梁の破骨細胞数は40〜60%、骨吸収は65〜75%に減少していた。成長速度は10週で117%、14週で140%に増加し、2次骨梁における骨形成は10週でわずかながら増加していた。また、下顎頭部では、実験開始6週以降、実験群の破骨脂肪数と骨吸収は対照群の約70〜85%に減少し、8週と10週での成長速度は約130%に増加していた。これらの結果より魚油の長期摂取下では骨吸収が抑制されると同時に、成長期の骨の成長・骨形成がわずかに促進されることが示唆された。
2.実験的歯の移動に対する影響では、実験群では歯の移動量は対照群の80%、圧迫側の破骨細胞数は約60%、骨吸収面は約80%とそれぞれ有意に減少していた。これらの結果より、魚油の長期摂取下では破骨細胞の出現と骨吸収が抑制され、実験的歯の移動が遅延することが示唆された。
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