研究概要 |
我々は,HIVプロテアーゼの阻害剤を基質遷移状態概念を基盤として分子設計を行ない,酵素阻害の最小阻害活性部位の探索や高い酵素阻害活性を持つキノスタチン(KNI)-272の合成に成功した.これは,酵素の反応機構に着目し,活性中心の基質遷移状態のコンフォメーションを固定したミミックをデザインするという新しく論理的な方法によるところが大きい. この方法を更に発展させて,HIVプロテアーゼとそのアナログを合成し,基質や阻害剤と複合体を形成して相互作用の解析を物理化学的手段を用いて行い,基質,阻害剤分子単独のコンフォメーションと,複合体形成時のコンフォメーションとの詳細な比較解析を行った.そして酵素と阻害剤の相互作用に関する分子認識を基盤として活性型コンフォメーションに構造規制された阻害剤の分子設計を行い,さらに分子量の小さい阻害剤ジペプチド誘導体KNI-413とKNI-549を合成した. HIVプロテアーゼ誘導体の合成に関しては,HIV-1プロテアーゼは2つのシステインを含んでおり3次元構造からこれらはジスルフィド結合をしていないことがわかっているので,システインをイソステリックなアミノ酸に変換した誘導体をわれわれの開発した効率的固相法とChemical Ligation法を用いて合成した.また,基質との相互作用に関与している25位アスパラギン酸をイソステリックなアミノ酸に変換した誘導体も合成した.
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