研究概要 |
本研究は,M.H.Wolfら(1978)が開発したMISS(Medical Interview Satisfaction Scale)が,わが国においても診察に対する患者の満足度を測定する手法として適用できるか,さらには医療の質の評価のひとつの手法として利用できるかを検討することを目的として行った。 研究者らは,MISSを翻訳して作成した日本語版MISS調査票を用いて,埼玉県内の3つの病院を受診した患者756名を対象に調査を行い,日本語版MISSの信頼性・妥当性などを検討した。 日本語版MISSの信頼性については,α信頼性係数を算出して内的整合性を検討した。α信頼性係数は,すべての項目の合計点で0.95,また領域ごとの合計点でも0.80以上で,内的整合性はあるものと判断された。また,妥当性については,適当な基準がないので,診察に対する全体的な満足度を基準として,基準関連妥当性を検討した。具体的には,診察に対する全体的な満足度と領域ごとの合計点との相関係数を算出した結果,相関係数はいずれも0.65以上で,相関は有意に強く,基準関連妥当性はあるものと判断された。 次に,一元配置の分散分析を行い,患者の性別・年齢,診察を担当した医師,患者の受診した施設による患者の満足度の差異を検討した結果,患者の性,診察を担当した医師,患者の受診した施設による差は認められなかった。しかし,年齢については,情動領域の項目において有意な差が認められ,年齢が高くなるにつれて満足度は高くなっていた。 診察に対する患者の満足度を測定する手法であるMISSは,わが国においても適用できることが検証された。しかし,医療の質を評価する手法としての利用の可能性については,今回の研究では,必ずしも実証できなかった。これについては,調査対象施設を増やして,今後さらに検討する必要がある。
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