研究概要 |
遺伝子トラップ法におけるスクリーニング法の開発を行なった。ES細胞を浮遊培養すると単純胚様体になり、その後さらに嚢胞性胚様体が形成される。この嚢胞性胚様体は、形態的に6.5日胚に類似している。機能的にも類似しているかどうかを、マーカー遺伝子の発現パターンで解析した。用いたマーカーは、転写因子としてvHNF1,HNF1,HNF3β,HNF4、肝臓特異的遺伝子としてtransthyretin,alpha-fetoprotein,albumin遺伝子である。解析の結果、発現パターンは正常の内胚葉の形成過程のパターンと類似していること、したがって胚様体形成が正常発生を反映することが分かった。 トラップベクターが複数コピー組み込まれた場合は、トラップクローンからの内在性遺伝子の単離は容易ではない。このため、ES細胞に挿入された余分なベクター部分を取り除くために、マーカー遺伝子の両端にloxP配列を組み込んだ。このベクターを用い、ES細胞に電気穿孔法で導入し、ネオマイシン耐性トラップクローンを120個単離した。これらの胚様体形成過程で、X-gal染色を行ない、発現パターンを解析した。このうちβ-geoが常時発現するもの、最初は発現しているが胚様体形成と共に発現消失するもの、最初は発現しないが後に発現するもの、途中で発現が消失するもの4つのESクローンについて未知遺伝子の単離を行なった。その結果、前記発現パターン順に、サイクリンB2、リボゾームRNA、未知遺伝子、ミトコンドリア遺伝子であった。以上から、loxP配列をベクターに挿入しておくことにより、比較的容易にトラップした遺伝子を単離できること、胚様体形成時の発現パターンと単離できた遺伝子との間に特に相関はないこと、しかし、このスクリーニング法は極めて有効であることが明らかとなった。
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