研究概要 |
1)東京都内A老人病院に入院中の患者83名を対象として,口腔内と鼻腔内のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)を検出した.全対象者のMRSA保有率は20.2%,口腔内での保有率は15.5%,鼻腔内での保有率は14.3%であった.2週間後の追跡調査では,ADLが良好な場合は一時的な菌の保有にとどまり,保菌者とはなりえない可能性が示唆された。 2)東京都内A老人病院において,入院患者・看護婦・病棟環境から194検体を採取した.全検体中MRSAは19.1%,多剤耐性CNS(Coagulase Negative Staphylococcus)は35.6%分離された.5種類の薬剤感受性試験の結果が一致した株(29.7%)は,一病棟から分離されたMRSAの42.1%を占め,病院感染の疑いを示唆する結果であった. 3)東京都内O病院の小児科外来を訪れた褥婦20名を対象として,乳輪部細菌の分離同定を行った.乳輪部から分離された細胞はすべて皮膚の常在菌であり,これらの分離菌は乳房清拭の有無と関係なくこれらの菌が検出された. 4)東京都A産院の健常乳児・非リスク産褥婦・産科病棟職員・産科病棟環境から採取した735検体より,MRSA10株1.3%)が得られた.先行研究よりも低い保有率であったが、分子免疫学手法によって従来の検出方法より厳密に同定されたためであると考えられた. 5)全国の訪問看護ステーション612件に質問紙調査を実施した.回収率は31.2%,MRSA陽性者数は1施設あたり平均2.84±3.83人であった.在宅ケアにおいて,家族や介護職への感染防止のための指導が十分できないという意見が訪問看護職から最も多く寄せられ,今後の課題である.
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