研究概要 |
種特異補体制御因子は、自己補体の不要な反応を防ぐために、細胞膜状に存在する膜糖蛋白分子である。ヒトではDAF(decay accelerating factor),MCP(membrane cofactor protein)及びHRF20(20kDa homologous restriction factor;CD59)が同定され、それらのcDNAもクローニングされている。これらの分子に機能不全が起これば、自己補体の反応を許して不都合な炎症病態を惹起すると考えられる。これを検証するためには実験動物による解析が必要である。 モルモットのDAFに対するモノクローナル抗体を作成同定できたので、これを皮内に接種すると血管透過性の亢進などの局所炎症反応を起こすことが確かめられた。一方、ラットの補体制御膜因子である512抗原に対するモノクローナル抗体をラットの皮内に接種した場合にも、強力な局所炎症反応が誘導された。この炎症反応は、あらかじめCobravenom factor(CVF)を投与して血中補体を枯渇させておくと炎症反応は全く起こらなくなることから、補体反応が炎症反応を誘起していることが確認できた。しかし、Cyclophosphamide投与で白血球を抑制しておくと、補体反応によるC3沈着は起こっても、炎症反応は減弱したので、補体反応に引き続く白血球侵潤が炎症病態の形成に重要であることがわかった。 アンチセンスヌクレオチドで512抗原の発現を抑制するためのプラスミドを作成し、ラット腫瘍細胞にトランスフェクトしてフローサイトメトリーによる解析を行った。512抗原の発現抑制は認められたが、その効率は未だ満足するレベルに至らなかった。一方、モルモット及びマウスのDAFのcDNAクローニングを行い、それらの遺伝子を明らかにすることができた。従って512Ag以外に、モルモット及びラットのDAFの発現をアンチセンスヌクレオチドで抑制する実験も可能にすることができた。
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