研究課題/領域番号 |
07457608
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小西 郁生 京都大学, 医学研究所, 講師 (90192062)
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研究分担者 |
山邊 博彦 京都大学, 医学研究所, 助教授 (00135592)
佐川 典正 京都大学, 医学研究所, 助教授 (00162321)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 卵巣癌 / 組織発生 / 分子病理学 / p53 / K-ras / nm23 / VEGF / ゴナドトロピン / 性ステロイド受容体 |
研究概要 |
卵巣癌はその約半数が初診時にすでに腹腔内へと進展した進行癌であるため、その初期発生過程は明らかにされていない。表層上皮由来とされる卵巣腫瘍は、漿液性、粘膜性、類内膜、明細胞などの組織型に分類され、またそれぞれに良性、境界悪性、悪性腫瘍が存在するが、悪性腫瘍せある卵巣癌がそれぞれの組織型の良性腺腫または境界悪性腫瘍から続発性に発生するのか(adenoma-carcinoma sequence)、あるいは、卵巣表層上皮から直接発生するのか(de novo carcinogenesis)は不明である。その解明のために、初期卵巣癌患者の臨床経過の詳細な観察、卵巣癌の同一腫瘍組織の中の病理組織学的所見と対応した遺伝子変異の多様性に関する分子病理学的解析を行った。卵巣癌の進展形式についてもその多様性を種々の遺伝子発現から検討した。 癌発生の臨床経過が詳細に据えられている不妊症治療中の卵巣癌を検討すると、漿液性癌は突然発生し発見された時点ですでに進行したものが多く、一方、子宮内膜症に続発した類内膜癌や明細胞癌には初期癌が多いという多様性が明らかとなった。さらに、卵巣癌におけるゴナドトロピン受容体の検討やゴナドトロピンによる卵巣癌細胞のアポトーシス抑制から、卵巣癌発生におけるゴナドトロピンの関与が示唆された。 卵巣癌におけるp53遺伝子変異に関与するp53蛋白過剰発現の免疫組織学的解析において、粘液性癌ではp53発現が組織学的悪性度の高い上皮細胞のみに観察された。一方、漿液性癌ではp53陽性細胞が一見良性とも思える上皮細胞を含めて腫瘍全体に均一に分布し、良性病変を介さずde novoに発癌する可能性が示された。さらに、分子病理学的検討により、同一パラフィン切片の組織学的に異なる部位からのDNA抽出により、粘膜性腫瘍におけるK-ras変異がheterogeneousに存在することが確認され、この腫瘍が大腸癌と同様に、adenoma-carcinoma sequenceの過程を経て癌化することが示された。 mRNA発現の減弱が深く関与することが明らかとなった。しかし、卵巣癌にはnm23遺伝子の変異の頻度は低く、nm23遺伝子はいわゆる癌抑制遺伝子とは異なるものと考えられた。また、卵巣癌細胞のVEGF強発現は進行癌に多く認められ、腹腔内進展と有意に関連することが明らかとなった。卵巣癌患者の血中VEGF値のEIA法による測定では、正常女性に比し、明らかに高値を示し、VEGFが卵巣癌患者の新しい腫瘍マーカーとなりうる可能性が示唆された。
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