研究概要 |
本研究の目的はおもに以下の2点を明らかにするために行われた. 1.小学校6年生(12歳)で全国小学生陸上競技大会100mで入賞した男子児童8名について,その後中学校3年生(15歳)にかけて疾走能力,疾走フォームおよび脚筋力の発達を縦断的に検討した.その結果は以下のようであった・ 疾走速度は12歳から14歳にかけて8.79m/sから9.61m/sへ,ストライドは12歳から13歳にかけて1.95mから2.08mへそれぞれ有意に増加した.12歳から13歳間の疾走速度の増大はピッチよりもおもにストライドの増加によるものと考えられた.疾走速度とストライドの間には有意な偏相関が認められたが,ピッチには有意な偏相関は認められなかった.一方,疾走速度と非支持時間には正の偏相関が,支持時間には負の偏相関がそれぞれ認められた.等速性膝筋力と疾走速度の偏相関をみると,屈曲力の角速度180,300deg/sと優位な関係が認められた.また,12歳から15歳にかけて疾走速度の増加量と角速度180,300deg/sにおける膝屈曲力の増加量の間に有意な関係がみられた. 2.上記研究1.の被験者の中で,高等学校まで継続した事例2名(IKとNI)の疾走能力,疾走フォームおよび脚筋力について12歳から18歳における縦断的発達をとらえた.その結果は以下のようであった. IKとNIの疾走能力を比較すると,12歳から13歳まではIKの方がNIよりも優れた能力を発揮していたが,14歳から18歳にかけて,NIの方がIKよりも100mスプリントタイムや疾走速度が優れていた.両者のこの疾走能力が逆転した原因は,IKのピッチやストライドは加齢につれて顕著な向上を示さなかったが,反対にNIはピッチ,ストライドともに14歳以降さらに向上させていることによると考えられた.疾走フォーム関わる等速性膝筋力をみると,膝間節屈曲パワーはIKは加齢にともなう顕著な増加はみられなかったが,NIは12歳から14歳にかけて著しく増加し,その後は停滞傾向であった.IKとNIの両者でこれらの各関節まわりのピークパワーをみると膝関節屈曲パワーの値が13歳以降,各年齢においてNIの方がIKよりも顕著に大きい値を示した.
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