研究概要 |
学習者が,学習支援システムの助けを借りて,新しい概念や知識を問題解決能力として手続き化するためには,既得の概念手続きや知識手続きを含んだ構造化を達成する必要があり,理想的には、学習者と教師と協力者からなるグループが,システムを媒介としたコミュニケーションによって,社会的に合意された構造と,学習者の持つ構造の間の合意を図るためのネゴシエーションを行う必要がある. この際,当該の問題分野の支援においてシステムが内部で用いる記号体系が,当該問題分野の概念を獲得していない学習者において、学習者自身がもつ現実世界との相互作用における差異の体系と対応しなければならないが,この対応は,有縁的表現手段と恣意的記号表現手段を含むマルチメディアの有機的組合せを利用したコミュニケーション媒体としての多次元メディア表現を通じた学習者とシステムとの間での対話によってのみ,達せられる. さて,われわれは,このような学習支援システムのあるべき形として,学習者自らが問題を記述し,問題解決のための試行錯誤を伴う作業を行うことができる反応的な作業場を提供し,多次元メディア表現によるネゴシエーションの手段と,方略を含む汎化知識によって,この作業を支援することにより,知識の使い方を獲得させるという機能を前提として,学習支援システムの多様な支援方法を、試作による比較評価に基づいて進化させて行くための開発環境CAFEKS(Computer-Assisted Free Exploration of Knowledge Structures)を開発してきたが、今回、発想の転換によって,支援方法を容易に記述し,試作による試行錯誤を行うことができる自然な構成が見いだされ,開発環境としての試作がほぼ完了したので,これを報告する. また,間接的な問題解決支援の仕組みとして,例題や既決問題,そのほかの教材をメディア表現したデータベースを検索して,比較対照というネゴシエーションによる差異の認識という学習にとって本質的な活動を支援する仕組みShareMediaを開発してきたが,試作としては、完成の域に達した.当面の問題と、あるいは検索された教材と比較する価値のある教材を検索するために,教材にインデックスをつけるのであるが,水準と分野区分ごとに教材を共有するグループが、プリミティブな意味フレームレパートリを合意し,その組み合わせでインデックスをつけ,グループでそれを検索に利用するもので,これについても報告する.
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