研究概要 |
データ並列モデルの実用化およびそのベクタ・プロセッサへの応用に向けて,さまざまな角度から基礎研究を行なった.研究項目は以下の通りである. 1.データ並列モデルに基づいた並列処理システム データ並列モデルに基づいて記述されたプログラムを高速に実行する具体的な超並列計算機システムを研究開発した.ハードウェアとして,1024台のプロセッサを持ったSIMD方式の超並列計算機SM-1を開発した.ソフトウェアとしては,「並C」とよばれる拡張C言語や,TUPLEとよばれる拡張Common Lisp言語を設計し,それらの言語処理系およびデバッグシステムを開発した. 2.データ並列モデルに基づいた応用 データ並列モデルによるプログラムの記述性と応用分野の開拓を目的として,いくつかの高度な計算機応用プログラムに対して,データ並列モデルに基づいた新しいアルゴリズムを提案することによって,実行時間を大幅に改良する研究を行なった.提案したアルゴリズムは,実際に上記「並C」および下記のNCXで記述し,上記SM-1において実行性能を計測し,その有効性を検証した. 3.データ並列モデルに基づいたプログラミング言語NCX データ並列モデルに基づいた並列計算プログラミングをより一般的なものとするために,計算機アーキテクチャに依存しない拡張C言語NCXを新しく設計し,異なる計算機アーキテクチャを持ついくつかの並列計算機に対するコンパイラおよびデバッグシステムを研究開発した.コンパイラの開発コストを低減するための方法として,プリプロセッサによるコンパイラ共通の前処理方式を開発し,この方式をすべてのコンパイラに適用した. 4.データ並列言語のベクトルプロセッサ用コード生成 データ並列モデルに基づくプログラムをベクタ・プロセッサ上で実行するための処理方式を開発した。開発した処理方式は,プロセッサに配置されたデータをベクタとみなすことによって,データ並列プログラムをベクタ・プロセッサ上で高速に実行するものである.この方式に基づいたNCXコンパイラを試験的に開発した.このコンパイラを使用し,具体的ないくつかの応用プログラムをマイクロVP上で試験実行し,開発した処理方式の有効性を検証した.その結果,優秀なプログラマがアセンブラでコーディングしたプログラムに匹敵する性能が得られることがわかった.
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