研究概要 |
本研究では,(1)装置全体の動作特性の改良および(2)圧縮液領域におけるヘリウムIIの定常熱伝達の実験を行った.(1)に関しては,昨年度からヘリウムIとヘリウムIIを分離するためのセパレート部と熱交換器をもつインサート部を製作し,圧縮液領域へのヘリウムIIが安定して発生できるか否かの装置全体の確認を行っているが,本年度はいっそうの低温の達成をめざした.その結果,大気圧飽和のヘリウムI(バス温度Tb=4.2[K])の状態から飽和ヘリウムII槽の真空排気を始め,1時間程度で圧縮液領域のヘリウムII(Tb=1.72[K]〜1.75[K],P=0.1044[MPa])の状態が達成できた.(2)に関しては,発熱体であると同時に温度計としても使用できるロジウム-鉄薄膜温度計素子および白金-ロジウム(13%)細線(径0.025[mm],Tb=1.75[K]〜1.90[K])を伝熱面として使用して,(1)において達成されたヘリウムIIの圧縮液領域において定常伝熱特性を測定した.その結果,ロジウム-鉄薄膜温度計素子については,垂直の姿勢で実験し熱流束上昇時の伝熱特性が得られたが,従来の細線の結果(金-マンガン[0.25%]線,径0.08[mm],Tb=2[K])と比較すると,伝熱面温度は同じ熱流束で比較すると高温側へ多少ずれた結果となった.白金-ロジウム(13%)線(姿勢:水平)に関しては,熱流束上昇・下降時の伝熱特性が得られた.従来の細線の結果(上述の金-マンガン線およびロジウム-鉄線,径0.051[mm],Tb=1.85[K])と比較すると,線径が小さいほど膜沸騰領域へ移行する熱流束は大きくなり,また伝熱面温度は同じ熱流束で比較すると高温側へ移行する結果となった.
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