研究概要 |
マウス能のcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行ない、ヒトのHuD、HuC、Hel-N1と相同な蛋白質をコードする3種類のcDNAをクローニングし、それぞれmHuD,mHuC,Mel-N1と名付けた。ノザンブロット解析を行った結果、mHuD,mHuC,Mel-N1の各マウス遺伝子は脳特異的に長さの異なる2種類のmRNAを産生しており、mHuD,Mel-N1遺伝子に関しては精巣でも弱い発現を示すことが判明した。in vitro selection系を用いて、それぞれの蛋白質のRNA結合特異性を調べたところ、Pu(U)_<2-5>(PU)_<1-2>(U)_<2-5>PuというAU-rich element様の配列を持つRNAと結合することが明らかになった。また、mHuC蛋白質は3個のRNA結合ドメインを持つが、実際にAU-rich element配列を認識し結合能を担っている領域を特定した結果、アミノ末端側の2個のRRMだけで完全なmHuC-L蛋白質とほぼ同等のRNA結合能や結合特異性を有していることが明らかになった。さらに、これまで機能不明であったカルボキシル末端側のもう1個のRNA結合ドメインが、ほとんど全てのmRNAの3′末端に存在するポリ(A)配列に結合することを発見した。この同一蛋白質内に存在する2種類のRNA結合能によって、mHuCを含めた一群の神経特異的RNA結合蛋白質がproto-oncogeneなどの細胞増殖を制御するmRNAに特異的かつ効率良く結合することが強く示唆された。一方、mHuCと類似のマウスMel-N1蛋白質が細胞質内に局在することや、自分自身をコードするmRNAの3′非翻訳領域に特異的に結合することを見出し、この蛋白質の発現が自己制御されている可能性を提唱した。
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