研究概要 |
鉄筋コンクリート造の中層建物における変動軸力が少ない1階の中柱を想定した.カンティレバ-型の実大に近い試験体を用い,一方向と二方向同時の静的載荷を行い,二方向時の耐震性能を調べた。試験体は、一体打ちの鉄筋コンクリート柱(RC柱)10体と外殻に横補強節を埋め込んだプレキャストコンクリートを使用して内部にコンクリートを充填した鉄筋コンクリート柱(外殻PCa柱)14体の計24体である。また,両構造体ともに,普通コンクリートと高強度コンクリートの2種類を使用した。各試験体は曲げ先行型で,せん断スパン比は普通コンクリート試験体(B×D:40cm×40cm)の場合2.5,高強度コンクリート試験体(B×D:35cm×35cm)の場合3.0である。 普通コンクリート柱の場合,主筋はSD35(12-D16),横補強筋はSD30で,コンクリートの28日標準強度は240kgf/cm^2(外殻:600kgf/cm^2)である。高強度コンクリートの場合,主筋はSD50(12-D19),横補強筋はSBPD130/145で,コンクリートの設計強度は600kgf/cm^2(外殻:800kgf/cm^2)である。実験変数は,一方向載荷,二方向載荷,横補強筋比(Pw=0.29,0.57,0.6,0.97,1.2%の5種),横補強筋の形状(口型,囲型),軸力比(N/BDF_c=0.25,0.4,0.25の3種),材料強度とした。 漸増変位による二軸載荷時の柱断面における圧縮歪分布と中心圧縮歪性状の実験結果とファイバーモデルによる解析結果とも比較検討し,一軸載荷に対する二軸載荷の効果を把握した。結果をまとめると,同構造体では,横補強筋が少ないと一軸載荷試験より二軸載荷試験の方が最大耐力以後の耐力低下が大きいが,横補強筋が多いと大変形まで両載荷による耐力の差はみられない。しかし,横補強筋が多くても断面の圧縮歪分布と断面中心圧縮歪は,一軸載荷より二軸載荷の方が大きく増加する傾向を示した。これは,一軸載荷時に比べて二軸載荷時の損傷が大きいことを証明するものと考える。解析においても実験結果と同じ傾向を示し,ファイバーモデルによって損傷の程度を把握できる。
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