研究概要 |
ペロブスカイト型希土類アルミネートRAlO_3(R:希土類元素,La〜Lu)において、主要構成イオンR^<3+>の大きさを系統的に変化させることによって、結晶格子や結晶構造にどのような影響を及ぼすかを観察・解析した。この結果、特定のNdとSmの比をもつ平均イオン半径のときに、固溶体(Nd_x,Sm_<1-x>AlO_3の結晶構造の対称が変化し、見掛け上の構造相転移のような現象を示すことを見出した。これは、いわば“相転移の化学的シミュレーション"となる。このような静的な構造変化を温度や圧力変化などに伴う動的な構造変化との関連を明らかにすることによって、地球科学的には地球深部における高温高圧下での構造変化の可能性を推定できるし、また、材料科学の側面からは物質構造を制御することにつながり、特定の物性を示す結晶構造を得ることを可能とする。 室温での固溶体(Nd_x,Sm_<1-x>)AlO_3の構造変化の解析は放射光を用いた高分解能粉末X線回折により行い、一連の端成分RAlO_3ついての室温における構造変化の追跡と、高温での構造変化の観察は通常の実験室における封入管X線源によって行った。この結果、Rイオン半径の変化に対する構造変化と温度変化に対する構造変化の関係を明らかにすることができた。Rイオン半径の変化に伴うRO_<12>配位多面体の変化が圧力変化に対応するものと仮定すれば、温度と圧力に対する構造平衡図を推定できることを示した。このみかけの構造平衡図より、ペロブスカイト型希土類アルミネートRAlO_3においては、温度上昇により斜方晶から三方晶(菱面体格子)へ、さらに立方晶へと変化すること、圧力上昇ではその逆の相転移が生じる可能性を示した。
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