研究概要 |
本研究では、スクラップに依存しない太陽電池用シリコンの製造と基板の製造プロセスを確立するために、安価な金属シリコンを出発原料にして気化精製、凝固精製により低コストの太陽電池用シリコンと基板を製造する方法を開発することを目的とし、水冷銅ルツボを用いて、プラズマアーク溶解法および電子ビーム溶解法による製造法を提案した。 1.気化精製実験 プラズマアーク溶解実験では、水蒸気添加プラズマ溶解の結果、Bを効果的に除去することが可能であった。30分の溶解で12ppmから1ppm以下まで低下することがわかった。電子ビーム溶解実験では、Fe,Ti,Bは、蒸発による除去できなかったが、Ca,Al,P,C等の元素は容易に気化除去できることがわかった。 2.連続鋳造実験 プラズマアーク、電子ビームを熱源として、水冷銅ルツボを用いたシリコンの連続鋳造法を開発した。プラズマアーク溶解による精製では偏析によるわずかな精製効果は認められたが十分ではなかった。本実験のような規模の小さな実験では、プラズマの強い撹拌力のため方向性凝固をすることが困難であった。電子ビーム溶解による結果では、Fe,Tiなどの遷移金属元素を偏析により除去することが可能である。溶解出力が大きいほど、製造速度が遅いほど、精製効果を向上することがわかった。電子ビームによる連続鋳造は、上方からの加熱であること、比較的溶湯の流動の少ない溶解法であること、および溶湯が浅いため方向性凝固に適していることがわかった。また本方法で製造したシリコンインゴットからウェーハを切り出し、通常の電池化プロセスをへてセル化することにもほぼ問題が無いことがわかった。 本方法は、大型化も比較的容易であったことから、低コストの太陽電池用シリコンの製造方法の一つとして実用化に寄与できるものと考える。
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