研究課題
基盤研究(B)
本研究の成果は、以下の3点としてまとめることができる。第一の成果は、絵巻物にえがかれた資料と古代末から中世の遺跡で検出された考古学資料を、比較研究できるようにするためのデータベースを作製したことである。まず、絵巻物資料についてのデータベースを作製した。つぎに日本中世の発掘調査報告書をしらべ、それをもとに考古学資料についても文字データと画像データを共存させたデータベースを作製した。そして絵巻物資料と考古学資料の両方のデータベースを複合し、比較研究のためのデータベースを作製した。第二の成果は、比較研究のためのデータベースを管理・活用するための情報管理システムをつくりあげたことである。上記の比較研究データベースとホームページの連携を試みた。この試験運用のかたわら、このデータベースが現時点で公開可能なものであるかどうかを検討した。第三の成果は、作製したデータベースと情報管理システムを活用して絵巻物にえがかれた資料と古代末から中世の遺跡で検出された考古学資料を比較・検討し、基礎的な研究をおこなった。これは物質資料をもとに日本中世史のあたらしい歴史像を構築するための一助となるものである。以上のような成果をふまえ、3年間の研究活動をとりまとめる報告書を編集し、1998(平成10)年3月に名古屋大学文学部から刊行した。本研究では高度に発達した情報機器・情報技術を駆使し、考古学的な視点で絵巻物を積極的に活用し、多様な形式の情報を提供できる態勢を構築したといえるであろう。