研究概要 |
研究代表者は、非天然アミノ酸としてリジットな構造を有する分子を骨格に導入することで、天然アミノ酸を望む位置に配置できる環状ペプチドの分子設計を行ない、天然アミノ酸間の協同作用を調節することで機能性ペプチドを開発しようと考えている。本研究では、非天然アミノ酸としてリジットな骨格構造を有するアミノ安息香酸を用い、天然アミノ酸と交互に配列した環状ペプチドを分子設計・合成し、その機能解析を行った。さらに、一定の機能アッセイに対して、どのアミノ酸配列が機能発現に有効であるかを探索する目的から、ペプチドライブラリーの開発を行った。 環状ペプチドとして、3-アミノ安息香酸(Aba)とアミノ酸(AA)が交互に配列したCyclo(-AA-Aba-)_n(n=3,4)を合成し、その構造について分子力学(MM)計算を行ったところ、3-アミノ安息香酸の固い構造のために、n=3においては三角形、n=4では正方形の構造をもち、それぞれ中央にキャビティー(空洞)を有することが明らかとなった。またこの構造は比較的リジッドであるために、天然アミノ酸の配列を変化させても骨格構造はほとんど変化しないことが示された。さらに、この環状ペプチドはDMSO溶液中、リン酸モノエステルと強く結合(平衡定数:10^6mol^<-1>dm^3オーダー)することが明らかとなり、この平衡定数は環状ペプチド骨格を構成するアミノ酸数に依存し、ヘキサペプチドが最も強く結合することが示された。この環状ペプチドにおいて、天然アミノ酸としてセリンプロテアーゼの活性部位を構成するセリン・ヒスチジン・アスパルギン酸を有する環状ペプチドを合成したところ、p-ニトロフェニル酢酸に対して加水分解活性がみられ、活性はヘキサペプチドよりオクタペプチドの方が高いことが示された。次に、神経内分泌ホルモンである8-アルギニンバソプレシン(AVP)の受容体アンタゴニスト探索を目的として、上記環状ペプチドのライブラリー化を検討した。方法としては、オキシム樹脂を用いた化学的方法を用いたが、溶解度の差による配列のばらつきが問題となり、ライブラリーの利用までは至らず、ペプチドに導入した際、溶解性が高い非天然アミノ酸の選択について現在検討中である。
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