光第二高調波発生法(SHG)は高い表面感度をもち、固体表面の対称性に敏感な表面分析法である。本研究ではこの特徴を生かし、対称性に関わる物理量(表面のストレス、欠陥、電子状態の変化など)の二次元分布を測定することができるSHG顕微鏡の開発を行い、さらに実際の表面現象の観測に応用することを目的として研究を行った。 1.初年度では、落射型顕微鏡とII-CCDカメラを組み合わせたSHG顕微鏡を構築した。空間分解能は約1μmであり、ダ-クノイズが極めて小さく、微弱な表面SHGを十分検出できる高感度なシステムが完成した。 2.2年目では、まず構築したSHG顕微鏡の性能評価を兼ね、GaAS(110)劈開面のSH像観察を行った。観測範囲全体のSH光強度は結晶の対称性から予想される偏光方位角依存性を示し、また劈開面上の微小構造(ステップ、ホール等)を反映したコントラストをもつ空間分解能約1μmのSH像を得ることができた。特に異常にSH強度の強い領域を発見し、その原因が劈開時に生じた剥げかけたGaAs薄膜構造にあることを見出した。 3.典型的な有機非線形材料である尿素の微小結晶のSH像観察を行い、塊状部分でSH強度が小さく、一方、針状結晶部分でSH強度が大きく又その強度が結晶の配向に強く依存するという結果を得た。これよりSHG顕微鏡は結晶性の分布を観察する方法として極めて有効であることが示された。 4.表面プラズモンが励起されたときの表面電場の強度分布を評価するために、金属回析格子のSH像観察を行った。その結果、溝の谷部分でSH光が強く発生していることが分かった。 本研究で開発したSHG顕微鏡は表面分析装置としての充分実用的であることが実証された。今後はいろいろな表面現象の研究に応用していく予定である。
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