研究分担者 |
紀本 静雄 株式会社アプコ, 研究開発担当, 社長
黒澤 正紀 (黒沢 正紀) 筑波大学, 地球科学系, 助手 (50272141)
島 邦博 筑波大学, 物理学系, 助教授 (70087964)
古野 興平 筑波大学, 物理学系, 教授 (40015772)
|
研究概要 |
本研究では,ミクロンオーダーの化学的不均質性を持つ鉱物試料を高エネルギーイオンビームで局所分析するため,必要な機能を備えた試料室を開発することが主要な課題であった.3年間の研究を通じ,当初の目標である(1)試料室の開発に成功しただけでなく,(2)マイクロビーム作成のための小型タンデトロンの導入,(3)X線スペクトルの解析プログラムの導入にも着手することができた. 試料室の開発では,高エネルギーイオンビームによる鉱物試料の分析で先駆的な成果を挙げているオーストラリアの研究所の分析装置を初年度に調査し,それを基に今回の設計と開発を行った.開発でのポイントは,1)分析の空間分解能を高めるためにビームを試料面に垂直に入射すること,2)分析箇所をミクロンオーダーで決めるために顕微鏡によって試料面を垂直に観察できるようにすること.3)ビーム調整のために蛍光物質に照射したビームの形と大きさが観察可能で,照射中の試料の状態も観察できるようにすることであった.これらの制約を同時に満たすには,ビームと試料観察の光学系の光軸が同軸であるこが必要で,この点を長焦点の光学顕微鏡と反射鏡の組合せによって解決した.作成した試料室では,ズ-ム機能を備えた反射兼偏光顕微鏡によって試料を60倍から360倍の倍率で観察することが可能で,高機能のドライビングステージによって測定一を±5μmの精度で決定できる.また,微量元素の効率的な測定に必要な吸収体(フィルター)についても,複数の吸収体を迅速に変換できるようにその交換マガジンを備えている.さらに,この試料室には主成分である軽元素と微量の重元素を同時に測定できるように2つの検出器を取り付けている.既に,隕石・高圧実験試料・流体包有物などの予察的な測定を行い,今回開発した試料室が充分な性能を持つことを確認している.今後は,現在開発中の小型タンデトロンによるビームラインに今回の試料室を設置して,現在,カナダのゲルフ大学から導入中の解析プログラムを合わせることによって,地球科学試料に対する新しい分析システムを構築する予定である.
|