| 研究概要 |
ビニル芳香族化合物は,ポリマー等の原料として重要な合成中間体である.しかし,芳香族化合物を直接ビニル化する効率的な方法が知られておらず,一般には数工程の合成が行なわれている.本申請では,我々が発見したフェノールの直接ビニル化反応を実用化することを目指して研究を行い,以下の成果を得た.
1)フェノールのアセチレンガスによるビニル化反応について,基質の構造と反応性について系統的に調べた.電子供与性基を有するフェノールの反応を完成した.この方法によって,従来全く知られていなかった各種ヒドロキシスチレン類の合成に成功した.ハロゲンやアルコキシカルボニル,ニトロなどの電子吸引性基をもつ反応性の低いフェノールのビニル化も達成した.
2)フェノールの2,6-ジビニル化を完成した.単純な構造の化合物であるが,Chem.Abstr.に記載のない新規化合物群である.
3)GaCl_3を用いる芳香族炭化水素のβ-シリルビニル化を完成した.脱シリル化によって,ビニル芳香族化合物を得た.反応機構的には,新しい有機ガリウム中間体が生成していることを明らかにした.この研究を基礎にして,有機ガリウム化合物の新しい反応を開発した.
4)アセチレン化合物の新しい活性化を含む炭素炭素結合生成反応を開発した.アセチレン,オレフィンと一酸化炭素をカップリングさせて,シクロペンテノンを合成するPauson-Khand反応がアンモニア水で促進されることを見い出した.また,共役ポリイン構造を持つ新しい抗菌物質を開発した.
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