研究概要 |
固液界面で生じる種々の化学及び物理過程は,原子・分子のレベルでは十分には解明されていない。最近の各種走査型プローブ顕微鏡や界面分光法の発展により固液界面への分子論的アプローチが活発化しつつある。本研究では電極表面における化学過程を電気化学走査トンネル顕微鏡(STM)並びに界面第二高調波(SH)発生,界面和周波(SF)発生の非線形レーザー分光法により直接分子レベルで観測するシステムの構成と応用とを行った。 電気化学STMでは,探針の作成法を種々検討してCV及びSTMの両者に適したものを測定に用いた。吸着量の異なる鉄プロトポルフィリン吸着グラファイト電極をほう酸バッファー中(pH10)で分子像を観察した結果,高吸着量の場合には多層構造で吸着しかつ各層は一定の格子定数を持つ規則構造をとること,低吸着量のときには鎖状構造で吸着することなど従来報告されていない固液界面吸着形態の存在することが分かった。 非線形レーザー分光法では,電気化学との併用により修飾電極表面の状態を明らかにすることを目的とし,共鳴SH分光法を用いて電極表面吸着メチレンブルーの酸化還元挙動の解析を行った。その結果,電位を酸化側から還元側にステップすることによるメチレンブルーの還元量の時間変化を議論することが可能となった。また,界面SF分光法では測定系を構成試作し実験に及ぼす種々の要因を検討した。金(111)電極表面の単分子層吸着オクタデカンチオールの測定を試みた結果,スペクトル分解能は20cm^<-1>程度とやや低いものの電極上吸着化学種の振動スペクトルの測定を可能とした。 以上,固液界面における化学過程に対する分子論的アプローチを電気化学走査型プローブ顕微鏡と非線形レーザー分光法の組み合わせにより達成した。
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