研究概要 |
本研究では,申請者らが開発してきたレーザ光弾性法について,He-Neレーザのフォーカッシングおよび試料あるいは光学系を非回転で計測する方法を確立した.この非回転で試料の主応力差と主応力方向を同時に計測する方法は,変調された振動楕円偏光の非線形光学効果により生じる高調波振動偏光を,二相ロックインアンプで計測することで可能になった.また,応力解析については,主応力差と主応力方向分布から応力成分を分離するための解析プログラムを作成した.さらに,シリコンとGa-As単結晶について,光弾性定数の結晶面および結晶方位依存性が得られた.具体的には,主に以下の内容について十分評価できる結果が得られた. (1)0.01mm以上の空間分解能で応力場を計測するこができた.また,試料のスキャン部分を自動化することで,さらに空間分解能を改善できる可能性があることがわかった. (2)主応力差と主応力方向分布から応力成分を分離するために,せん断応力差積分法を用いた実験応力解析手法を,本研究で得られた実験結果に適用するプログラムを作成した.また,有限要素法による応力解析結果と実験応力解析結果を比較した結果,良い一致が見られ,本研究の妥当性が検証された. (3)シリコンの{100},{110}および{111}面とGa-As単結晶の{100}面の光弾性定数の決定した.今後,さらに詳細な実験行うことで,力学的に異方性を有する単結晶の応力計測および応力解析が可能なことがわかった. 以上,本研究の成果は薄膜や結晶内の微視的応力場や,生体膜・細胞内の流動現象の解明などに応用されうることが今後期待できる.
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