研究概要 |
平成7年度から8年度にわたり,射出成形中に金型を超音波加振して,プラスチック射出成形品の品質改善を目的とした方法を確立するために研究を行った結果,以下の事柄が明らかとなった.1.超硬合金製の圧力-比容積-温度測定装置を作製し,加振しない状態での圧力-比容積-温度の関係を測定したところ,一般に使用されている圧力-比容積-温度測定装置で測定された値とほぼ同じ値が得られた.このことから,本装置で十分に圧力-比容積-温度の関係を測定できることが分かった.2.超硬合金製の装置のキャビティ内に白金箔製のヒ-タを入れて樹脂を直接的にステップ状或いは正弦波状に加熱し,温度を測定することで樹脂の熱拡散率を求めることができる.3.金型を共振周波数で加振しながら射出成形を行うと,結晶化度の高い成形品ができることが明らかとなった.なお,加振の効果を得るためには,固定側,移動側の各々に超音波振動子を取り付けて加振する必要がある.4.二つの圧電素子を移動側金型と固定側金型にそれぞれ取り付けて,これらが対向するように取り付けられた場合に,同位相で加振したときと逆位相で加振したときについてその影響を調べた.その結果,加振方法による影響は少ないことが明らかとなった.また,振動視を対向させずにずらして加振した場合についても同様の結果であった.5.90度の曲がり部における充填状況や結晶化度について調べた結果,加振すると結晶化度が均一化する事が分かった.この結果より,固化時の収縮量が均一となりそりや捻れなどが起こり難くなると思われる.6.高密度ポリエチレンのように単純な分子構造を持つ樹脂では加振の影響が大きく現れるが,ナイロン,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,等のように複雑な分子構造を持つ樹脂に対しては,超音波加振の影響が現れにくいことが明らかとなった.
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