| 研究概要 |
ユーザーがセラミックコーティング膜を設計し使用するために利用し得るトライボ特性試験機を開発し,基準となし得る試験方法を確立することを目的として,セラミックコーティング膜の微視的トライボ特性を環境制御型走査電子顕微鏡内に設計・製作された環境制御型走査電子顕微鏡トライボ試験機(ESEM・VTRトライボシステム)により,摩擦・摩耗試験を行った。また,更に,原子間力顕微鏡を改良した原子間力顕微鏡トライボ試験機(AFMトライボシステム)により同じセラミックコーティング膜の微視的トライボ特性を明らかにした.得られた主な成果を以下に示す.
1)種々の成膜条件による窒化炭素膜の巨視的トライボ特性試験が行われ、窒化炭素膜の押し込み硬さが大きいほど比摩耗量が小さいことが示された.
2)2種類の荷重下で窒化炭素膜と炭素膜の巨視的トライボ特性試験が行われ、高荷重では炭素膜の方が比摩耗量は小さいが,低荷重では窒化炭素膜の方は比摩耗量が小さいことが示された.
3)環境制御型走査電子顕微鏡内に設計・製作された環境制御型走査電子顕微鏡トライボ試験機(ESEM・VTRトライボシステム)により窒化炭素膜の摩擦・摩耗試験を行い,種々の蒸気圧中でダイヤモンドとの間の摩擦係数が0.08以下という非常に低い値であることが示された.
4)先端半径を変化させたダイヤモンドピンによるAFMを用いた微視的トライボ特性が調べられ,先端半径が大きく接触面圧が小さな場合,窒化炭素膜の方がDLCより耐摩耗性に優れているが,先端半径が小さな場合には逆転することが示された。この結果は,巨視的摩耗特性試験より得られた。高荷重ではDLCの方が比摩耗量は小さいが,低荷重では窒化炭素膜の方が比摩耗量が小さいという結果と一致した。
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