研究概要 |
デジタル画像処理技術を応用して,3次元スカラー場計測のための走査レーザ誘起蛍光法計測システム(Scanning LIF)を構築し,混合層の3次元濃度計測に適用することにより本計測システムの有効性を評価した結果,以下の結論を得た. 1)音響光学素子,光学鏡,ガルバノミラーなどにより,Ar-Ionレーザーシートを測定領域内を高速で走査するシステムを開発した.また,スカラー場を2次元断面内の励起光強度分からデジタル画像処理により定量化し,ハイビジョンテレビ(HDVS)システムの使用,レーザ光強度変動の補償によって,温度計測に伴う計測の不確かさを従来のNTSC方式と比較して約50%に低減した. 2)開発したスカラー場計測システムを粒子画像流速計(PIV)と組み合わせることにより,速度・温度の同時計測システムを構築し,レーザシート光を測定領域内で走査することによって,時空間的に発展する熱流動場における輸送現象を3次元的に捉えることが可能となった. 3)構築したシステムを,温度成層下の混合層における速度・温度の2次元および3次元同時計測に適用して,熱流動場の特性を明らかにし,システムの有効性を評価した. 本研究を通じて,熱流動場の広い領域における3次元的な熱輸送現象の定性的・定量的解析が可能となったが,一方,3次元速度・スカラー同時計測システム開発に際して,いくつかの新たなかつ重要な問題点が浮き彫りになった.これらの解決には,特に空間解像度が高く,高速撮影可能な画像計測機器の開発が望まれる.また,本計測システムでは,個々の物量を厳密には時空間的に同時に得ることができないため,同一時刻情報として算出するための計算手法の開発も望まれる.上述のことが達成されれば,種々の熱流動場における流量および流路形状等の条件に対してデータベースを構築することができ,熱輸送プロセスの最適化を行うことが可能となる.最後に,本手法をさらに発展させるため,この方面の開発研究を今後とも継続していく必要があろう.
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