研究概要 |
本研究では,微細電気伝導プローブ,微細熱電対プローブを製作し,原子間力顕微鏡を用いて,サンプルとプローブの針先で構成されるポイントコンタクトを通しての,電気伝導,熱伝達の解明,および,サブミクロン構造を持つ試料表面の電気伝導・熱伝導像の計測を行った. プローブ作成は,金,白金,ニッケル細線を電気化学的に先鋭化し,絶縁被膜を付けた後,金または白金薄膜を蒸着し,針先に熱電対接点を形成するプロセスを開発し,先端曲率半径5μm,接点サイズ10μm程度のプローブを製作出来た.また,電気伝導プローブは同じプロセスで金細線・金薄膜の組み合わせを用い,ポイントコンタクト電気コンダクタンスを四端子法で計測した. ポイントコンタクトの状態を解明するため,プローブを試料に近づけ,接触させ荷重を変化させた時の,電気コンダクタンスを計測し,材料の弾性,塑性変形モデル,電子輸送のバルク,メゾスコピックモデルと比較することで,接触点の半径が10nm以下であり,塑性変形が起こり電子は平均自由行程が接触径を超えているメゾスコピック状態で移動することが結論付けられた. また,ポイントコンタクトにおける熱輸送は,周囲気体の影響を大きく受けるため,微細熱電対プローブで加熱試料からの熱伝達を調べる場合には,原子間力顕微鏡を真空容器内に格納し,環境圧力を変化させて計測を行った.大気圧下では空気を通しての熱伝導が支配的であり,微細領域の熱画像を撮った場合,空間分解能は30μm程度になるが,圧力の低下に伴い空間分解能は上昇すること,点接触を通しての伝熱は非常に少ないため,さらに微細な熱電対プローブが必要とされることが明らかとなった.さらに,複合材料の熱物性値分布の計測を行った結果,10^<-4>Torrの真空環境で0.1μm程度の分解能で熱伝導率のイメージが得られ,研究目的を十分に達成することが出来た.
|