研究概要 |
従来のマニピュレータを幾何学的に相似に縮小したマイクロマニピュレータでは,期待された機能を発揮しないことがわかってきた.つまり,寸法に適した機構と制御をふまえたマイクロマニピュレータでなければならない.本研究では,微小部品の組立に適したマイクロマニピュレータの構造と原理を検討し,この結果を利用して寸法が1mm程度のマイクロマニピュレータのプロトタイプを試作することに成功した.距離が離れていても大きな力がでる電磁力のほうが,非常に小さなギャップが必要な静電気力よりも,1mm程度のマイクロマニピュレータには適しているという考えから,コイルで作られる磁場を通して永久磁石を駆動する.半導体加工技術で,2次元の複雑なパターンがつくれるので,基板に多数のコイルをつくり,基板上の複数の永久磁石を同時に駆動する.この方式の長所は,複数個の永久磁石を同時に制御できる点と,構造が単純であるので微小化できる点である.位置決め精度を上げるためにはコイルのピッチを密にすればよく,永久磁石自身を小さくする必要はない.また,ジョイントが弾性変形する「三脚」のような3次元構造を複数の永久磁石で動かせば,高さ方向にも位置決めできるし,組み合わせれば姿勢を決めることもできる.まず,ラージモデルとして6×6=36個のコイルを一辺が約10cmの正方形の基板に配置して,基板上の複数個の永久磁石を同時に駆動する実験を行った.永久磁石と操作対象物の位置をビデオカメラで計測してフィードバック制御も行った.ここで得られた知見をもとに,1.5mm×1.5mmのスペースに4×4個のコイルがアレイ状に並んだマイクロコイルアレイを作成し所期の目的が達せられることを如実に示した.また,本年度は,新しい試みとして,ローレンツ力を用いるマイクロマニピュレータを開発し,立体構造の自動組み立てシステムの実現可能性を示した.
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