研究概要 |
本研究では、心電図に同期させてパルス波形を大型加振器へ加え、脊椎に高周波成分まで含むパルス状の加振を行ない、胸部で脊椎と接する胸部大動脈を介して、高い周波数成分の微小振動を腹部大動脈や頚動脈の壁に伝搬させ、この振動波形を壁上の測定したい微小領域内の2点で同時に計測し、その局所における動脈硬化度の評価を行なった.本研究では、この加振による装置を実際に構成し、既に独自に開発してきた計測方法や多くの信号解析手法と組合せ、最適な加振方法,加振位置,加振周波数,計測位置などを基礎的に検討し,空間分解能の向上に関する評価を行なった。その上で,実際に正常者と患者に関して適用し,従来の動脈硬化診断法では達成できなかった,微小領域における組織性状の非侵襲かつ高精度計測方法として確立した。 本年度は、小岩が属する東北大学附属病院において、平成7年度に完成する装置を用いて多くの正常者/動脈硬化症患者の動脈壁上の微小振動を計測した。患者データを解析する上で新たに生じる問題点を工学的・医学的に検討し診断装置を改良した上で、計測された信号に対し、弾性率などの分析結果と年齢・血中コレステロール値などとの相関関係を調べた。 本研究では、壁弾性率の局所的変化の計測における空間分解能を、飛躍的に向上させて初期の動脈硬化病変の検出を可能とすることができた。この研究成果によって、動脈硬化症の早期/進展/縮退の各段階における血管壁上の局所の力学的硬化度の定量的計測・評価法を確立させることができる見通しを得た。
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