研究概要 |
EPMAによる面分析結果のカラーマッピング像を処理することにより、コンクリート中における塩素と硫黄の存在状態を判定する簡易状態分析法について検討を行った。この手法は、目的元素と、この元素とともに化合物を形成していることが判明している元素(塩素の場合CaとAl)を同時に分析し、それぞれのカラーマッピング像をRed,Green,Blueの3原色で示してCRT上で重ね合わせ、ヤングの3原色説に基づいて元素の結合状態を判定するものである。例えば、カルシウム、塩素、アルミニウムの3元素全てを重ね合わせた場合、白く表示された部分はフリーデル氏塩として存在すると判定され、黄色で表示された部分はそれ以外の水溶性の塩化物として判定される。本研究では先ず、普通ポルトランドセメントを用い、塩化物の添加量の異なるモルタル供試体による簡易状態分析を行った。その結果、塩化物量がセメント重量の0.4%以下の場合にはほとんどの塩素はフリーデル氏塩(3CaO・Al_2O_3・CaCl_2・10H_2O)として固定されるという既往の知見と合致した結果が得られた。次に炭酸化の進行したコンクリート構造物から採取したコア試料による分析結果では、炭酸化のフロント付近に濃集している硫黄の大半がエトリンガイト(3CaO・Al_2O_3・3CaSO_4・32H_2O)として存在しているという既往の研究結果を裏付けており、本研究で検討した簡易状態分析法の適用性が確認された。しかし、この手法の適用に当たっては、フリーデル氏塩またはエトリンガイトのような化合物の元素構成が既知であることが前提条件であり、またEPMAの分析条件やカラーマッピングの方法などに関しても分析の目的に応じた設定を行う必要がある。
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