研究概要 |
軟弱地盤上の盛土建設の際にひき起こる側方流動などの過大な地盤変状は,周辺の既存構造物に影響を及ぼし,有効な土地活用を制限する.そのような地盤変状を軽減する対策工として地盤中に矢板を打設する鋼矢板工がある.本研究は,粘土と鋼材間の摩擦挙動を精度良く再現できる試験装置を開発することを主な目的としている.このために,まず,次の課題を解決した装置を開発,製作した.(1)粘土の変形を伴う摩擦試験が実施できること.(2)供試体内の応力およにひずみが均一であること.(3)主応力の方向を制御できること.(4)主応力および接触面の応力が求められること.(5)間隙水圧を測定できること.(6)粘土および接触面上のせん断変位を測定できること.次いで,摩擦特性に及ぼす主応力の方向,応力履歴,拘束応力および鋼材の表面粗さを変えた実験を行い,粘土と鋼材の摩擦特性を考察した.その結果得られた主な結論は次の通りである. 1)粘土と鋼材の摩擦挙動には,粘土と鋼材の接触面ですべりが生じる場合と粘土要素内部ですべりが生じる場合がある.このときの応力状態は,主応力方向,すなわち最大主応力面と接触面のなす角によって決定される. 2)粘土と鋼材の接触面における摩擦特性は,粘土の破壊規準と同様にクーロンの摩擦則で表され,このときの摩擦定数は,鋼材の表面粗さ,材質,粘土の性質に依存する. 3)粘着力をもたない正規圧密粘土と鋼材では付着力はゼロであるが,粘着力をもつ過圧密粘土と鋼材の場合,付着力がわずかに存在する.また,摩擦定数の最大値は,接触面近傍の粘土要素の強度定数が上限である.
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