研究概要 |
本研究ではリサイクル時に混入が予想されるBi, Si, Fe等の不純物除去に有効な元素の探索およびAl-Mn系およびAl-Mg-Si系展伸用合金のJIS規格の特性を満足させるための各種不純物の許容濃度を求めることを目的として,遷移金属を添加した場合の凝固挙動,実用アルミニウム合金の機械的性質,成形性および耐食性に及ぼす不純物の影響についてミクロ組織因子の観点から考察した。(1)6061および6063アルミニウム合金に3d遷移金属V, Mn等を添加することにより,10μm以上の巨大な金属間化合物が晶出するようになる。これらの化合物はAl_6Mnあるいはα-Al (Mn, Fe) Si系化合物で,MnあるいはFeサイトに他の不純物が置換固溶する。これらの化合物の比重は溶融アルミニウムより大きいため,るつぼ底部へ短時間で沈殿し,不純物を除去することが可能となる。(2)Al-Mn系(3003)合金ではBiおよびCa量が増えても引張強さおよび0.2%耐力は変化しないが,伸び,衝撃値,成形性および耐食性は低下する。特にCa量が増えるとCaAl_2Si_2の粗大な化合物が増え,伸びおよび衝撃値が著しく低下するため,0.1%以下にする必要がある。(3)Al-Mg-Si系(6061)合金ではV, MnおよびCa量の増大とともに化合物量が増え,その中に時効硬化に寄与するSiが固溶し,析出物が少なくなるため,引張強さおよび耐力は著しく低下する。伸び,衝撃値および成形性はV添加合金では粗大な化合物の存在により低下するが,Mn添加合金では影響は認められない。一方、Ca添加合金ではマトリックスが軟化し,化合物は細かく分散するため,伸びおよび衝撃値は逆に向上する。Zr量が0.3%までは諸性質に及ぼす影響は認められない。6061合金のJIS規格値を満足させるためには,V, MnおよびCaはそれぞれ0.2%,0.4%および0.1%以下にする必要がある。
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