研究概要 |
各種プラスチックのガラス繊維補強,液体クロマトグラフィー用充填剤,固定化酵素,あるいは多孔質ガラス上での核酸プローブの合成,などのいろいろな用途においてガラス表面での化学反応を利用し,ガラス表面を化学修飾し,機能化することが行われている.さらに,シリコン基盤の表面もその被酸化層をガラス表面になぞらえて取り扱うことができ,最近このような試みが見られる. ガラス表面はどのような化学構造になっているのだろうか?申請者らの前にも,すでにガラスやシリカの表面構造に関する仮説は存在した.しかし,諸説は互いに矛盾し,しかも,根拠に乏しいと思われた. 本研究では多孔質ガラスを利用するモデル的な用途を設定し,このために実現可能な脱水条件下でガラス表面シラノール水酸基の構造を解明する.著者は前報で,500〜600℃での脱水で出現した孤立シラノール基は800℃より少し高い温度域で1/2モルの水を失って脱離するという仮定を前提に,上記条件での脱水試料表面には1nm×1nmの面積あたりほぼ4個のシラノール水酸基が存在し,これは無水ケイ酸本体の構造に由来する基本的な構造であることを示した.本研究では高温度で赤外線吸収スペクトルを観測する高温真空セルを準備し,さらに乾燥雰囲気中で熱処理を行う予備的な電気炉を併用して,前報で仮定したシラノール基の脱離の現像を明快に実証することが出来た.この基本的な知見をもとに,従来経験的に捕らえて来たシランカプリング剤結合量の増減,核酸化学合の最適化などを一貫して系統的におこなう方法を確立した.
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