研究概要 |
本研究では、超臨界流体を用いた新しい合成ゴム製造プロセスの開発のための基礎研究として、重合溶液からの未反応モノマーや超臨界流体による脱溶媒といった現プロセスの一部工程の改良、ならびに重合溶媒として超臨界流体を溶媒とした合成ゴム製造プロセスの提案することを目的とした. 超臨界流体には、臨界温度が室温付近にある二酸化炭素を用い、ポリブタジエンを試料として、そのヘキサン溶液からの溶媒の抽出実験を行った.実験は回分式で、操作条件はヘキサン-CO2系の気液平衡データから40℃で、圧力は2相領域ならびに均一相領域とした。抽出実験では、S/F〜100程度で試料中の残存溶媒は1%以下になることが判明した。S/Fがかなり大きな値となった理由としては、装置壁面に試料ポリマーが付着して超臨界流体と試料の接触効率が低いことが推定された。さらに,溶媒残留濃度の推定のため,無限希釈領域での分配係数の測定を超臨界クロマト法により行った.その結果,重量分率基準の分配係数は1〜2の範囲で,圧力とともに増大する傾向が見い出された. また,超臨界流体の重合溶媒としての可能性を検討する第一歩として,CO2中でのスチレンのラジカル重合を行い,転化率時間曲線,分子量分布と反応圧力との関係を検討した.8Mpaではバルク重合とほぼ同じ重合速度となったが,15,20Mpaでは重合速度の低下が見られた.これはCO2による希釈効果として液体溶媒についての既知の速度定数などを用いてシミュレーションをおこなったところ,定性的な傾向は再現できたが定量的な精度は得られなかった.これは,重合進行にともなってポリマー粒子の析出が発生するためと推察され,異相系での反応形態を明確にすることが重要な課題と示唆された.
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