研究概要 |
ネットワークポリシランは、2次元平面状に広がったシリコン骨格に有機側鎖のついた有機化合物と無機化合物が融合した形を有するポリマーであり,そのシリコン架橋構造ゆえに高い熱安定性を示す。また,その側鎖有機置換基の選択によって、有機溶媒に可溶であるという特徴を有している。本研究においては,シリコン骨格及び有機側鎖構造の制御されたポリシランの分子設計及び合成を行い,それらの加熱前および加熱後の光・電子物性を直鎖状のポリシランと比較し検討した。 加熱前のネットワークポリシランの光学的バンドギャップは直鎖構造を有するポリシランに比べて小さく,2次元平面状に広がったシリコン骨格に沿ったσ共役性が,吸収・発光スペクトルから示された。熱分析においては,直鎖ポリシランに比べてネットワークポリシランの非常に高い熱安定性が示された。ポリ(フェニルシリン)においては,1000℃までの加熱による重量減少が30%以下であり,スピンコート膜の熱処理によって一段階でのSiC薄膜の形成を行うことが出来た。しかし,XPSスペクトルを用いた解析からは薄膜中にはSiに対して当モル以上のCが含まれていることが示され,炭素含有量を減らすために,種々の側鎖有機置換基を有するネットワークポリシランの合成・物性解析を行った。その結果,プロピル基を有するポリシランにおいて良好な結果が得られた。また,ポリシランの合成は,110oCトルエン中での溶融ナトリウムを使用し有機塩化ケイ素化合物の反応を行うという,過激な条件下でのKippinng反応によって行われており,工業的にみて問題があった。そこで,より温和な条件下でのポリシランの合成条件の検討を行った。THF溶液中でマグネシウム電極を用いた電解法によるトリクロロオルガノシランの合成を試みたところ,ネットワーク状ポリシラン(ポリシリン)を合成出来ることが明かとなった。さらに,新規なセラミックス前駆体の開発を目的として,シリレン鎖と芳香族基からなる主鎖構造を有するポリマーの合成および物性の検討を行った。
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