| 研究概要 |
溶接構造物に分布する残留応力は,疲労,座屈,脆性破壊強度などに著しく影響するので,その把握が大切である。しかし,実溶接構造物の種々の複雑な拘束溶接継手について,X線応力測定法は母材部に適用出来るが,溶接部に対する測定精度が保証されない。すなわち,実溶接物に分布する残留応力を十分な精度で計測できる良い非破壊測定法は無い現状に在る。
そこで本研究では,X線応力測定法を用いた母材部の残留応力測定技術を確立し,さらに母材部における残留応力の測定値を基にして,溶接構造物全体の残留応力を推定する方法について検討を行った。成果の要約は次のようである。
1)X線応力測定装置にX線の入射角を自動制御により設定出来るように,X線入射角駆動装置を取り付けた。この装置をコンピューターによって制御し,X線応力測定装置を遠隔操作することが出来るので,X線傷害を完全に防止することが出来る。
2)X線応力解析法であるsin^2ψ法およびφ-sin^2ψ法を用いて,種々の溶接構造モデルの残留応力を測定し,実構造物へのX線応力測定法の適用性を確認すると共に,数値解析による溶接構造物全体の残留応力を推定するためのデータベースを揃えた。
溶接部から離れた箇所における残留応力の実測値から,構造部材の拘束応力と溶接部の固有歪を推定し,さらに構造物全体の残留応力を推定する方法を開発した。また,本研究で確立した方法を大型構造試験体に応用し,その有効性および実用性を示している。
|
