研究概要 |
ArF(波長193nm),KrF(248nm)およびXeCl(308nm)エキシマレーザーによる生体軟組織(筋肉,脂肪)と硬組織(牛大腿骨,歯牙)穿孔,切開を調べた結果,従来のCO_2(10.6μm)およびNd:YAG(1.06μm)レーザーと異なり,熱影響の少ない鋭利な穿孔,切開が可能であることが明らかになった.エキシマレーザーがその機能を最も有効に発揮できる医療分野は,これまでに行った実験および調査の結果より総合的に判断すると,整形外科,歯科,眼科および心臓血管外科と考えられる.紫外レーザービーム可撓誘導系として,OHイオンドープ純粋石英ガラスファイバーを実験によって検討した.OH数100ppm添加ファイバーの場合,レーザー伝送初期の伝送率は80%/mであるが,伝送パルス数の増加に伴い,伝送率は低下する.その原因は石英ガラス中に血管(E^1センター)が,生成されるためである.コアには塩素を含まないこと,クラッドにはホウ素とフッ素を添加すること,クラッドの屈折率分布をグレーデッド型とすることで,欠陥生成を低減できる.コアに水素を添加することも,欠陥生成を抑える効果がある.E^1センターは不安定な欠陥であり,ファイバー加熱によって除去できる.一方,OH数ppm添加ファイバーの場合,伝送初期の伝送率は数%/mであるが,伝送パルス数の増加に伴い,伝送率は80%/mまで増加する.これはファイバー製造時にできた酸素欠乏欠陥が,レーザー照射により解離するためである.コア入射端面のレーザー損傷閾値は,1J/cm^<2・>pulse程度であり,閾値を上げて伝送エネルギーを向上することは困難であるが,入射部のコア径を太くしたコーン状のファイバーであれば,閾値を上げずに伝送エネルギーを向上できると考えられる.未だ解決すべき問題点は多いが,問題解決の目処は得られており,紫外レーザービーム可撓誘導系の実現は近い.
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