研究概要 |
研削加工により硬脆材料の超精密加工を実現するには,砥粒の分布および保持力が均一な砥石(高均質な砥石)を開発することが求められる.本研究では,この社会的ニーズに対応するため,微粒子の電気泳動現象を利用した高均質ダイヤモンド砥石を開発し,その研削性能を実験的に調べた. 純水中に懸濁させたダイヤモンド砥粒は電荷をもたない.このため,この水溶液に電場を印加してもダイヤモンド砥粒は電気泳動現象を示さない.しかし,水溶液中で負の電荷をもつ高分子電解質をダイヤモンド砥粒の表面に吸着させて保護コロイドを形成すれば,保護コロイドは負の電荷をもつため,ダイヤモンド砥粒は保護コロイドを介して電気泳動現象を示すようになる.その結果,陽極上にはダイヤモンド砥粒の緻密な吸着層が形成されることになり,この吸着層を切断し,乾燥(焼成)すれば,砥石(ペレット)が得られる.以上のように,負の電荷をもたない砥粒に対しても,電気泳動現象を利用した高均質砥石作成法を提案した. 次に,粒径2〜10nmのダイヤモンドクラスタを用いて実際に砥石を作成してみた.この場合,陽極上に生成されたダイヤモンド砥粒の吸着層厚さは1mm程度に過ぎず,これをペレットとして用いることは困難であった.このため,陽極棒を砥石軸に見立て,これを軸付砥石として単結晶シリコンの研削加工実験を行った.研削加工の可能性は確認されたが,ダイヤモンド砥粒の粒径が小さいため,チップポケットが小さく,目づまりしやすい等の問題が生じた.そこで,この問題を解決するために,粒径の大きい(ミクロンオーダの)ダイヤモンド砥粒を用いて砥石を作成した.その結果,吸着層厚さを約2.5mmに増大することに成功し,ペレットとして使用可能な大きさの高均質ダイヤモンド砥石を作成することができた. 以上,電気泳動現象を利用した高均質ダイヤモンド砥石を開発し,その性能を実験的に確認した.
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