研究概要 |
本研究は技能者または作業者が従来多くの資材・時間・労力を要して体得していた切削加工における“know-how"を計算機内に構築した“計算加工システム(仮想切削システム)"を用いることによる,短時間・体系的に能率よく,かつ安全に体験し獲得するためのシステムを構築しようとするものである. またこのシステムは実在の工作機械,被削材,工具材を必ずしも必要としないため,仮想の特性を有する工具・被削材に対しても任意の切削条件の設定が切削の可能となり,将来の工作機械と工具の開発指針も得ることができる. まず申請者等が開発・構築してきた切りくず生成と工具損傷の計算機シミュレーションシステムを再整理し,未解決部の検討を行った. つづいて未解決部分の1つである工作物加工面特性,すなわち切削面の残留応力,残留ひずみ分布,これらに起因する加工物の変形を計算機によりシミュレート・予測する手法を確立すると同時にこれらを制御し,より有用な状況を作り出す方法について検討した. さらに切削加工現場で重要な切りくずの処理性を検討するため,チップ・ブレ-カのような任意すくい面形状の切削工具の切削性特性とこれにより生成される切りくずの破断過程をシミュレートする方法を確立した. これらのシステムの完成により任意形状工具の切りくず生成過程,工具損傷,切りくず処理性,さらに加工面特性をまでも実際の切削を行わないでも体験することが可能となった. 開発したシステムは膨大となるため,最後に切削加工現場で最も重要となる切削温度,工具摩耗を任意の切削条件,被削材特性のもとで容易に検討,体験する簡易型システムの開発を行った.
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