研究概要 |
近年の冷凍・空調需要の増加に伴い,夜間電力を利用した蓄冷熱システムの開発が盛んに行われており,高密度蓄冷熱が可能となる融解潜熱を利用した氷蓄冷熱システムが導入されつつある.特に,熱効率の良さや流動性を有する微細な氷粒と水との混合物であるスラリー状の氷水を蓄冷熱媒体として用いる研究が注目されており,その微細氷の生成法について様々な試みがなされている.また,現在冷熱貯蔵側より需要側への冷熱輸送媒体は氷水が主に用いられているが,氷水スラリーを用いることにより冷熱輸送密度が増加し,配管径やポンプ動力の減少を図ることができる.本研究では,二重管式熱交換器内を流動する過冷却水あるいは過冷却水溶液を利用し,管内または管外で過冷却を解消し微細氷へと相変化させる連続製氷法を提案し,冷却条件や流速などの因子が製氷挙動に及ぼす影響を検討した.その結果,管内流動過冷却水溶液の限界過冷却条件に及ぼす水溶液の流れ場および温度場の影響を明らかにするとともに,流動水溶液の過冷却安定条件における製氷効率の評価を行った.さらに,過冷却水溶液を用いた管内連続製氷法について,水溶液濃度,流量,冷却壁面温度および管材質等の諸因子の製氷挙動などに及ぼす影響について解明した.また,水平,垂直および傾斜管内の氷水スラリーの流動挙動を観察するとともに,氷充填率や流速など種々の条件下における圧力損失を測定して,輸送冷熱量と理論ポンプ動力の関係を整理し有用な関係式を得た.本研究にて得られた体系的な知見は,この種のシステムの有効性について示しており,潜熱蓄冷熱媒体として非常に有望な氷水スラリーの生成および輸送システム構築に際してに非常に有益な資料となるものである.
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