研究概要 |
本研究では,平成7年度までにほぼ開発されたシステムを用いて可撓性を有する植生層上の3次元瞬間流速場の測定を行った.その結果,植生境界上部に間欠的な組織渦の発生が確認された.組織渦は流下方向に前傾した楕円形をしており,渦前面に高速下降流が生じていた.その下降流によって植生境界が下方に押しつけられ,組織渦の流下に伴い植生のたわみが流下方向に伝播していくという穂波現象を捉えることが出来た.組織渦の周期は線形不安定解析に基づく理論と良い一致をしめし,組織渦の成因が主流速の鉛直方向流速分布の変曲点不安定であることが確認された.また,3次元の流れをApplication Visualization Systemを用いて効果的な可視化を行った.本研究で開発した計測システムは,この様な3次元性,非定常性の強い流れの構造を計測するために非常に有力なものであることが確認された. 組織渦の通過に伴う運動量や顕熱の輸送を明らかにするために,多摩川河川敷に広がるアシ原での現地観測を実施した.その結果,フィールドにおいてもアシ頂部付近に組織渦が発生しており,スペクトル応答解析を行った結果,組織渦に伴ってアシが振動していること,組織渦の通過に伴って植生層内外での熱・物質が交換されていることなど明らかになった. 今後は複断面開水路流に発生する水平組織渦の3次元構造や石の回りの複雑乱流場などの3次元性,非定常性の強い流れの構造の解明に適用していく予定である.
|