研究概要 |
治水機能と環境機能の融合のひとつの手段としての植生による堤防法面,高水敷の耐侵食保護について検討,設計指針について研究した.植物要素を離散的抵抗要素とすること,流れ支配方程式には高次乱流モデルを用いた水理解析手法を提案し,これによって高水敷,堤防法面に植生層を伴う流れで砂面の直接掃流力の低減を評価した.まず,鉛直二次元流を対象として,植生による耐侵食能が植生層によるレイノルズ応力分布の変質作用であることを基礎実験と数値解析によって明らかにし,植生高さ,密生度,エネルギー勾配に対する耐侵食能評価を数値解析で行う手法を示した.さらに,系統的な計算を行って簡便な推定式を提案した.次に梯川の実高水敷植生や養生した植生の上に洪水流を再現した実験により,本研究の考え方の適用性を確認している. 植生が変形する場合について,植生の曲げ剛性をパラメータとし,植生の変形と流れを同時に数値的に解く方法を示し,また基礎実験によって提案された手法が合理的でしかも精度が良いことを確認した.さらに,現地で植生の曲げ剛性をはかる手法を示し,実際に測定した曲げ剛性値を用いて現地植生の抵抗評価について妥当な結果が得られることを示した. さらに,植生を伴う流れの三次元断面計算手法を開発し,高水敷や堤防法面で植生層に覆われた砂面の掃流力の評価を行い,とくに堤防法面脚部,高水敷の低水路側端部に注目すべきであるとした.それらの位置での掃流力について,断面を表すパラメータ(高水敷での幅・水深比,高水敷幅・低水路幅比)とエネルギー勾配を系統的に変えて検討し,鉛直二次元解析による評価を割り増す係数(割増係数)を考えることが適当とした.なお堤防法面では砂面は横断勾配を有しており,耐侵食能を考えるうえでは,斜面では限界掃流力が減少していることを考慮した.
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