研究概要 |
最終年度は前年度までに蓄積した実験結果を基に,多元系固溶強化合金の高温長時間強度特性を評価した。単一では寸法効果による強化への寄与が小さいと期待される第三元素は,他の溶質元素が存在する場合に長時間強度に影響を与え,その効果は合金系および変形条件に依存することが実験的に明らかにされた。拡散係数の大きく異なる溶質を含むアルファ鉄-ベリリウム-マンガン合金では二元系合金の合金型クリープ挙動の出現する応力域の下限で強化が認められるが,高応力域ではひずみ速度への影響は小さい。アルミニウム-マグネシウム基固溶体では,第三元素は合金型挙動が現れる応力範囲でもひずみ速度に影響を与え,また合金型クリープ挙動が出現する応力範囲も変化させる。合金型クリープ挙動から純金属型クリープ挙動への遷移応力は溶質原子と転位の相互作用の強さを反映し,第三元素の効果は寸法差の大きい溶質原子と転位間のみかけの相互作用の変化として理解される。置換型溶質だけを含む多元系固溶体でも侵入型・置換型両溶質を含む固溶体で現れる挙動(IS効果)と類似の挙動が出現することは転位と溶質間の相互作用だけでなく異種溶質間の相互作用が長時間強度特性に影響を与えることを示し,この効果を利用した高温強度特性改善の可能性が示唆される。多元系合金における総合的な転位-溶質間相互作用の評価は強度特性に関する情報の蓄積が必要で,更に実験結果が蓄積されることが望ましい。
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