研究分担者 |
藤谷 伸 三洋電機, ニューマテリアル研究所, 主任研究員
米津 育郎 三洋電機, ニューマテリアル研究所, 主任研究員
山田 正明 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (30024342)
吉成 修 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (10134040)
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研究概要 |
本研究の目的は,主として液体急冷法(LQ法)によって作製できるアモルファス合金や,その合金を結晶化して生成されるナノ合金について,水素吸蔵特性を詳しく調べると共に,それらの特性と非平衡合金の構造或は微細組織との関係を明らかにすることである。また,スパッタ法で作製した多層膜の界面反応や固相アモルファス化などの構造変化に及ぼす水素吸蔵の影響に関する研究も行った。 1.アモルファス合金の水素吸蔵。遷移金属と希土類からなる2元及び3元系合金について研究した。Ndを5-30at.% 含むNd-Fe,Nd-Fe-B及びNd-Co-B系について調べ,水素吸蔵能や吸蔵放出速度と合金構造の関係を検討した。次いでZrを25-35at.%含むZr-Ni-V及びZr-Ni-Nb系合金について研究し,V及びNbを5-20at.%添加することによって,吸蔵能や吸放出速度が改善されるか否かについて調べた。これらの研究の結果,高い水素吸蔵能を有する合金が得られたが,吸放出速度には問題点が残った。 2.ナノ構造合金。Mg-Ni,Mg-Ni-Ls及びMg-Ni-Nd系について研究した。LQ法でアモルファス化した合金を結晶化温度直上で熱処理することにより,ナノ構造組織の2相(Mg+Mg_2Ni)或は3相(Mg+Mg_2Ni+La_2Mg_<17>またはNdMg_<12>)合金を得た。これらのナノ組織を有する合金は水素吸蔵能が高く,平坦なプラトー特性を有する上に,鋳造合金と比べて活性化が容易で,水素吸蔵放出特性が優れていることがわかった。 3.スパッタ法で作製したPd/Ti,Ni/Ti及びFe/Ti系多層膜の熱処理による構造変化のプロセスを調べた。Pb/TiやNi/Ti系では比較的低い温度の真空焼鈍で相互拡散が進行し,組成が均一化すると同時にアモルファス構造となることが分かった。一方Fe/Ti系ではアモルファス化が起らず,平衡相のFeTiが形成される。しかしこれらの多層膜を1-10気圧の水素中で焼鈍すると相互拡散は完全に阻止され,構造変化が起らなくなることが分かった。即ち多層膜構造が水素によって安定化される現象を見出した。
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