研究概要 |
本研究は前駆体法による線維紡糸技術を用いて高温酸化物超伝導体の線材化を行い、実用線材に必要な77Kで高いJ_C値を持つ線材の開発を目指して、各種の酸化物超伝導体に対して添加元素及び熱処理条件を検討する事、熱処理時における長尺化の可能性を検討すること及び多芯線化を目指す事を目的とする。具体的にはY又はNd,Ba,Cuの酢酸塩をポリ・ビニルアルコール水溶液中に溶解し、紡糸ドープを作製する。この紡糸ドープを乾式紡糸して細い線材とし、熱処理条件を検討して77K,OTで高いJ_Cを示す線材を作製する条件を見出す事を検討した。その結果、77K,OTで10^5A/cm^2のJ_Cを持つY系酸化物超伝導体が作製出来るようになった。さらに50cmの均熱帯を持つチ-ブ炉を購入し長いY123超伝導繊維の構造を検討した結果、酸素中で部分溶融凝固処理をして、77K,OTでJ_C=10^4A/cm^2を示す長さ20cmの連続した超伝導繊維を作ることが出来た。 短い繊維試料のJ_Cの磁場特性を東北大学金研で77K,10Tまでの磁場中で測定した。Y系超伝導繊維及び水銀系酸化物超伝導体繊維で77K,10Tの磁場中で10^2A/cm^2以上のJ_C値を観察した。低酸素分圧下で溶融結晶成長したNd123線維のJ_Cの磁場依存性は酸素中での後処理条件や前駆体繊維の組成に依存した。Nd123繊維のJ_Cの磁場依存性はY123繊維よりも良く77K,10Tで10^3A/cm^2以上を維持した。最後に高温酸化物繊維の金属中への複合化を検討した.Al,In,Ag等をマトリックスとして、焼結したY123繊維を埋め込んだ。銀ペーストを塗布して酸素中で熱処理する事で超伝導特性の劣化のない機械的性質の優れた複合体を作製できた。
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