研究概要 |
B2型金属間化合物のNiAlは,高融点,低密度,高耐酸化性、高熱伝導度,低コストなど,現在のNi基超耐熱合金に替わる次世代の超耐熱材料として期待されている.しかし,NiAlは結晶構造が単純であるにもかかわらず常温延性が低く,また,単相のままでは高温強度,特にクリープ条件下で評価した強度が低いことが開発上の障壁となっている.本研究では,金属間化合物の強度や延性の改善には一般の金属材料の場合と同様に多相化による組織制御が必須であるとの観点に立って,NiAlと結晶構造が類似し,格子ミスフィットが小さく,高温で相互溶解度が大きく,温度の低下により相分離の起こるNiAl-Ni_2AlTi系およびNiAl-Ni_2AlHf系に常温延性のあるNiTi-Ni_2AlTi系を加えて,相分離に高温強度,特にクリープ強度の大幅な向上をめざした.これらの系では,格子ミスフィット,弾性異方性,逆位相境界エネルギー,化学量論組成からのずれなどにより析出相の形態と時効硬化性が大幅に変化し、金属間化合物中に別の構造の金属間化合物が析出すると変形名にいわゆる超格子転位が形成されること,時効の初期段階での塑性変形ではすべりが集中し,すべり帯内で析出粒子が溶解消失する場合があることなどを初めて見いだした.NiAl-Ni_2AlHf系における降伏応力の温度依存症とクリープ変形挙動を調べ,NiAl中へのNi_2AlHf析出物の分散はNiAlのクリープ強度の上昇にきわめて有効であることを示し,クリープ変形中に析出粒子の結晶格子が母相に対して回転することや転位と析出物間には引力相互作用があることなどを明らかにした.
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