研究概要 |
反射光の検出に2次元のCCDイメージセンサを用い,高速のリアルタイム分光エリプソメトリー測定と顕微エリプソメトリー測定ができるエリプソメータを開発し,ステンレス鋼および炭素鋼表面の不働態皮膜の場所的ミクロ変化の解析に応用した。得られた成果は以下のようにまとめられる。 1.瞬間分光型マイクロエリプソメータの設計と試作:光源(Xeランプ)-コリメーター回転ポーラライザー走査試料ステージ-固定アナライザー反射像拡大レンズ群-分光器-CCD検出器から成る瞬間分光型マイクロエリプソメータを設計し,試作した。 2.瞬間分光型マイクロエリプソメータの校正と性能評価:作製したエリプソメータの持つ系統的誤差を残余関数校正法と回帰分析校正法を用いて補正した。本装置の測定波長範囲は470〜1060nm,最小測定所要時間は100ms,位置分解能は25μmである。 3.18-8ステンレス鋼および炭素鋼の孔食発生過程における不働態皮膜の場所的ミクロ変動の解析:0.1M-NaCl溶液中における18-8ステンレス鋼の孔食誘導期間中における不働態皮膜の変質過程を解析した。CVD法で作製したFe_2O_3-Cr_2O_3薄膜を用いるモデル実験によって得られた皮膜溶解過程のステクトル変化を参照しながら解析を行った結果,光学定数よりも膜厚の場所的ミクロ変化の方が大きいことが分かった。 5.炭素鋼の不働態皮膜の場所的ミクロ変動解析:pH8.45のホウ酸塩緩衝溶液中における亜共析鋼(0.12%C)の不働態皮膜の厚さおよび光学定数スペクトルの場所的ミクロ変動を測定した。フェライトおよびパ-ライト相を模擬した純FeおよびFe_3C上の不働態皮膜についても解析を行い,両相の皮膜の厚さと光学定数が異なることを明らかにした。
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